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1月25日付「週刊文春 電子版」(文藝春秋)記事が、中居正広さんと被害女性の間でトラブルが起きた会合の以前に行われたバーベキューパーティーに、2人とフジテレビ幹部社員、タレントの笑福亭鶴瓶さんらが参加していたと報じたことを受け、鶴瓶さんをテレビCMなど各種媒体で広告として起用してきた回転寿司チェーン「スシロー」が、公式サイトや広告から鶴瓶さんの画像を削除。鶴瓶さんは途中で帰宅して何もなかったと話しており、問題行為を行った疑いすら伝えられていない段階で広告に起用するタレントの画像を消すという判断が議論を呼んでいた。また、鶴瓶さんは今月2日付「NEWSポストセブン」の取材に対し、スシローの公式サイトから自身の写真が削除された経緯について「先方が勝手に決めたことなんで。事務所に削除するって連絡が来たんですよ」と答えており、スシロー側が一方的に削除の決定を鶴瓶さん側へ通知したとの見方も出ていた。Business Journalはスシローの運営会社FOOD & LIFE COMPANIESに取材を申し入れていたが、6日、「株式会社あきんどスシロー」名で以下のリリースを発表し、広告を順次再開していくと説明した。
「所属事務所様を通じて当初の報道に対し書面にてご見解を頂きましたが、状況の全体像が不明確であったため、所属事務所様にお伝えした上で、広告素材の使用を一時見合わせるという判断をいたしました。その結果として、笑福亭鶴瓶様および所属事務所の皆様にもご迷惑とご心痛をおかけし、深く反省しております。当初より本日まで所属事務所様とのやり取りや社内協議を続け、広告などを順次再開することといたしましたので、ここにお知らせいたします」
大手メーカーで広報業務を担当した経験がある管理職はいう。
「一社でも広告からの削除という動きを見せると、他の企業や出演番組にもそれが広がり、タレントの業務に損害を与える懸念もあるため、判断に当たっては慎重になるべき。その意味で今回のスシローの判断は拙速すぎたともいえるが、問題の性格が極めてセンシティブなものだけに、特にスシローのように一般消費者と近いBtoC企業は過剰に反応して先走りしてしまいがちなのは理解はできる。『迅速な対応』というのは危機管理の鉄則とされるが、今回の件では『早すぎてもダメ』という難しさも浮き彫りとなった。今回の事例は他の企業にとっても大きな教訓として学ぶべきところが多い」
当サイトは1月30日付記事『スシローが鶴瓶さんの広告画像を不祥事ない段階で削除、適切なのか…その理由』でこの問題を考察していたが、以下に再掲載する。
※以下、日時・数字・肩書・固有名詞等の表記は掲載当時のまま
――以下、再掲載――
幹部社員が女子アナウンサーを接待や懇親会の席などに同席させていた疑いも浮上しているフジテレビは17日、記者会見を実施したが、出席するメディアを記者クラブに加盟する社に限定し、会見の模様の映像の撮影を禁止。さらに、立ち上げる調査委員会を日弁連の定義に基づく第三者委員会の形態にはしないと説明したことを受けて批判が拡大。大株主である米投資ファンド、ダルトン・インベストメンツなどから抗議の書簡を受けたこともあり、フジ・メディアHDは23日の臨時取締役会で、日弁連のガイドラインに従った第三者委員会の設置を決議。27~28日には改めてオープンなかたちで会見を行った。
27夕方~28日未明にかけて行われたこの会見では港浩一社長、嘉納修治会長の辞任と、清水賢治専務の新社長就任が発表されたが、経営陣が約10時間にもわたって記者から厳しい質問を投げかけられる様子は10分のディレイで放送され、多くの人を釘付けにした。事態が大きく転換したのは翌29日。中居さんとの間でトラブルがあった会食に被害女性を誘ったのはフジテレビの幹部社員だと報じていた「週刊文春」は、誘ったのはフジ幹部社員ではなく中居さんだったと訂正。これまでフジテレビは一貫して幹部社員による当該会合への関与を否定しており、フジテレビ経営陣の会見の直後に訂正を発表した「週刊文春」の姿勢にも批判が集まっている。
注目されているのがスポンサー企業の動きだ。会見翌日18日にはトヨタ自動車や日本生命保険など大手企業がフジテレビ番組でのCM放送の見合わせを発表し、この動きに追随する企業が続出。その数は現時点では70社以上に上っている。フジテレビは放送見合わせ分の広告料金について返還し、さらに2月以降の放送広告契約のキャンセルにも応じる方針であり、すでにキャンセルする企業が相次いでいる。
2つの疑問点
そうしたなか、スシローは前述の対応をみせ、これに対し疑問の声もあがっている。危機管理・広報コンサルタントで、長年、企業・自治体の管理職向けに模擬緊急記者会見トレーニングや危機管理広報、SNSリスク対策研修・セミナーの講師なども手掛けてきた平能哲也氏はいう。
「今回のスシローの対応は危機管理広報(クライシス・コミュニケーション)、企業広報の観点からも理解に苦しみ、多くの人から納得を得られる判断とはいいにくいと思われます。スシローは鶴瓶さんを広告キャラクターとして起用した時は、その起用理由についても詳細にプレスリリースで紹介しており、サイト上から画像を消すのであれば説明が求められます。テレビCMも含めた広告に起用しているタレントの画像が突然、企業の公式サイトから削除されれば、世間は『何があったのか』『理由はなんなのか』と疑問に思うのが当然でしょう。現在のインターネット、SNSなどでは、こういう話題は憶測や噂を呼び、ネットメディアに取り上げられてさらに拡散されてしまいます。『女性自身』ウェブ版記事に寄せられた同社の回答を読んで納得する人は少ないでしょうし、同社が『具体的な理由は言わない(言えない)』という姿勢だけは伝わってきます。
大きな疑問点は2点あります。まず、鶴瓶さん本人、もしくは所属事務所に事実確認を行ったのかという点です。もし仮に確認をした上で問題行為はなかったという回答を得たのであれば、広告出演契約に基づいて起用を続けるというのが自然な対応でしょう。スシローは企業理念として『素直に話を聞き、最後まで行動します』という文言を掲げていますが、まさにこの言葉に沿って鶴瓶さんの話を聞くべきではないでしょうか。
2つ目は、お客さまからどのような声が寄せられているのかを明らかにしていないという点です。もちろん顧客情報は秘匿したうえですが、寄せられた意見をいくつか挙げて説明するのは可能では。その点に触れずに『総合的判断』だとして曖昧な回答に終始すれば、今回の件について、新たにお客さまからの問い合わせが増えるリスクもありますし、鶴瓶さんのファンからは『どういう理由で削除したのか』とクレームが寄せられる事態も想定できます。そうした声も踏まえて、『そういうことなんだ』と誰もが納得、理解できるような具体的なステートメントやコメントを発表するべきだと考えます」
(文=Business Journal編集部)