中小企業こそフィンテックを活用すべき理由…決済・経理など業務効率向上

11 時 前 5
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 フィンテック(FinTech)とは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語。金融サービスにITを活用することで、金融機関が提供しているサービスの利便性アップやコストカットを実現したり、まったく新しい金融サービスを生み出したりといった、急速な革新が進んでいる。フィンテックが活用されている分野は、決済・送金、デジタルバンキング(ネット銀行)、資産運用、保険、家計管理、暗号資産、ブロックチェーン技術、金融機関向けシステム開発など、多岐にわたっている。

 なかでも消費者向けのサービスにおいて、近年の物価上昇を背景に、「キャッシュレス=ポイント=お得」という図式を強く印象づけるサービスの利用が急拡大中だ。アプリ(Apple Pay、Google Payなどのタッチ決済も含む)を通じてお金を払う際にポイントを付与して、消費を丸ごとアプリ経済圏(楽天、PayPay、Vポイントなど)に囲い込む流れが進んだのに加え、給与口座を管理する銀行も含めた、三井住友フィナンシャルグループのスーパーアプリ「oliveアカウント」の成功がさらに弾みをつけている。

 また、新NISAの開始を機に高まった資産運用熱の余波を受けて、ポイント投資の拡大も目立っている。各ポイントの内部運用(ポイント運用)、証券会社の連携(ポイント投資)に加え、グループ内証券会社によるサービス提供(PayPay、エポスカード)もそろい、2025年もますます規模を拡大していくとみられる。このほか、ヤマダデンキやJALなどの非金融機関が住信SBIネット銀行から銀行口座サービス(NEOBANK)の提供を受け、顧客向けにポイントやローンの優遇をすることで利用促進を図る動きが始まっている。この銀行機能の提供は、Baas(Banking as a service)と呼ばれ、ユーザーのメリットも大きいため今後も導入が進むとみられている。

2025年は「デジタル給与」「公共交通の決済手段多様化」「中小企業の決済・経理・受発注の効率化(業務Saas)」に注目

 2025年に注目の国内フィンテック関連ビジネス筆頭格と目されるのが、「デジタル給与」だ。2024年11月に、国内初の給与デジタル払いサービス「PayPay給与受取」が開始され、大きな話題を集めた。企業側は振込手数料の節約、従業員側はチャージの手間を省ける点がメリットだが、経済圏間の争いが激化しているなか、他社の参入から手数料の割引・ポイント優遇などをてこに利用拡大競争が始まっていくかもしれない。

 SuicaやPASMO、ICOCAなど交通事業者による電子マネーによる地域独占・寡占となっていた公共交通の決済における、多様化の進展にも注目が集まっている。首都圏、関西圏などの大都市圏では、クレジットカードのタッチ決済を使った公共交通機関乗車が拡大中。たとえば三井住友カードのタッチ決済で乗車すると、Vポイントが貯まる。自分がよく利用する経済圏でポイントをまとめたい人は増えており、利用できる路線・駅が拡大するに連れて、既存の電子マネーから移る動きが加速していくだろう。交通系電子マネーの雄・Suicaを運営するJR東日本の対応にも注目だ。

 最後に、B to B分野で進む「中小企業の決済・経理・受発注の効率化」にふれておこう。クラウドでサービスを提供するSaaS(Software as a Service)の形態で、各分野の業務を効率化する「業務Saas」の導入が進んでいる。AIの活用によるさらなるサービス向上も期待でき、働き方改革や賃金上昇、人材採用の難化といった、中小企業の課題をカバーする業務の効率化にかかる期待は非常に大きい。

 少子化・高齢化による労働力および需要の減少がともに進む日本は、効率化・省力化・コストダウンの威力が大きいフィンテックを育てる土壌としてはうってつけといえる。2025年が、国内の課題解決に力を発揮したサービスが世界に羽ばたく「フィンテック中興の年」になる可能性もある。

(文=日野秀規/フリーライター)

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