2種類あるって知ってた?「日本版ライドシェア」と「公共ライドシェア」は何が違うのか

アットダイム 3 週 前
Facebook Icon Twitter Icon

現在、日本で運行が許可されている「ライドシェア」には2種類存在する。

いわゆる「日本版ライドシェア」と「公共ライドシェア(自治体ライドシェアとも)」で、この両者はそれぞれ異なる法的根拠の下にある。一般には日本版ライドシェアのほうが知名度が高く、それ故に両者を総称して「日本版ライドシェア」とすることもあるが、厳密に言えばそれは間違いなのだ。

が、両者の混同は今現在の国土交通省の姿勢、そして今まで行われた有識者会議の流れを見れば、やむを得ないことである。これは国交省に対する批判ではない。ライドシェアに関して言えば、「法はあくまでもそれを実現させるための手段」であり、最も重要な「交通空白地解消」の達成を最優先にする姿勢が見て取れるのだ。

ライドシェアが世界中に普及した理由

元々のライドシェアとは、タクシー免許を取得していない車両及びドライバーが配車アプリと契約して旅客輸送を担うというものだ。

この仕組みは日本に限らず、世界各国でも大きな非難を浴びたのは事実である。タクシー免許がない輸送車両ということは、即ち「白タク」だからだ。では、なぜそんなライドシェアが一瞬のつむじ風で終わらなかったのかというと、従来型のタクシーよりも割安の上に当初から乗車地点と降車地点を指定できる利便性、そして事前に運賃が確定する決済の透明性がユーザーに歓迎されたからだ。ライドシェアアプリを使えば、ドライバーに理不尽な遠回りをされることも「乗ってみたら意外に高額だった」ということも起こり得ない。

従来型タクシーが、そのような利便性の高いアプリの開発を後回しにし続けたことは否定できないだろう。これはもちろん、日本のタクシー会社にも当てはまることだ。

法的区分の違い

ともかく、日本でもいよいよ「アプリで旅客車両を呼び出す」ということが地方都市でも可能になりつつある。

それを実現するのが上述の「日本版ライドシェア」と「公共ライドシェア」なのだが、この両者はそれぞれ法的区分が異なる。これについては、国土交通省がXのポストで分かりやすいイラストを公開している。

よく混同されがちですが
国交省の推進するライドシェアは【2種類】です

🚗公共ライドシェア🚗
市町村やNPO法人が自家用車で提供する
有償の旅客運送!

🚙日本版ライドシェア🚙
タクシー事業者の管理下で自家用車・一般
ドライバーを活用したライドシェア!#交通空白解消へ pic.twitter.com/q7V6ISe0rH

— 国土交通省 (@MLIT_JAPAN) September 26, 2024

そして、日本版ライドシェアとは道路運送法78条3号に基づいた制度で、公共ライドシェアは道路運送法78条2号に基づいた制度であることをここで説明しなければならないだろう。以下、道路運送法78条(有償運送)の条文を引用したい。

第七十八条 自家用自動車(事業用自動車以外の自動車をいう。以下同じ。)は、次に掲げる場合を除き、有償で運送の用に供してはならない。

一 災害のため緊急を要するとき。

二 市町村、特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他国土交通省令で定める者が、次条の規定により地域住民又は観光旅客その他の当該地域を来訪する者の運送その他の国土交通省令で定める旅客の運送(以下「自家用有償旅客運送」という。)を行うとき。

三 公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき。

ここは3号の条文に注目していただきたい。「公共の福祉を確保するためにやむを得ない場合において」とある。つまり、日本版ライドシェアはあくまでも「やむを得ず導入している」ものなのだ。

が、そのような法を改正するのではなく、あくまでも拡大解釈で目的を果たそうとするあたりがいかにも日本的ではあるが……。

法律はあくまでも「手段」

そんな日本版ライドシェアにタクシー会社ではない業種の運行・管理参加を認めようという議論が去年からあるが、それよりも現状として、日本版ライドシェアと公共ライドシェアの明確な違いが、見た目では分かりづらい。地域によっては、役割も重複している。

また、日本版ライドシェアでも公共ライドシェアでも、それを実施するとなると絶対に該当自治体との連携が欠かせない。その地域に合った柔軟なライドシェアの運行・管理は、国交省も想定していることである。だからこそ、去年の前半まで日本版ライドシェアの呼び出し方法は「原則スマホアプリ」だったのが、去年後半から「電話を使った配車」も認められるようになったのだ。

2号を適用するか3号を適用するか、はたまた両方のライドシェアを導入して交通空白地・時間帯の解消を目指すか、それは地域によりけり。そのような意味で、法律はあくまでも手段に過ぎない。国交省並びに自治体としては、信頼できる会社や団体がライドシェアを担ってくれればそれに越したことはない、という姿勢のようだ。

「呼び方」が確立した流れ

さて、筆者が@DIMEで2024年3月3日に執筆・配信した以下の記事がある。

全国5つの自治体で導入される日本型ライドシェア、自治体主導で本当に大丈夫?

日本型ライドシェアの話題。これはまるで掘りたての温泉のように、新しい発表が毎日毎週湧いてくる状態だ。 去年まで、ライドシェアなる新交通システムに興味を持っていた...

この中で筆者は、「自治体ライドシェアの定義」ということで筆を進めた。当時は「日本版ライドシェア」と「公共ライドシェア」の呼び分けが確立しておらず、国交省の自動車部会では「ライドシェア」という文言を使用すること自体が避けられていたきらいもある。自治体にライドシェアの管理を任せるべきなのか、地元タクシー会社との摩擦を起こさないようにするにはどうすればいいか、ということが活発に議論され、その中で少しずつ「日本版ライドシェア」「公共ライドシェア」という呼び方に落ち着いた。

それから11ヶ月後、呼び方こそ何とか定まってはきたが、それぞれのライドシェアをどのように運用するかは未だ手探りの模索が続けられている状態だ。

【参考】
日本版ライドシェア、公共ライドシェア等について-国土交通省

文/澤田真一

もっと詳しく