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私は国立天文台に所属する天文学者で、水沢VLBI観測所(岩手県奥州市)の所長を務めつつ、国内外の電波望遠鏡のネットワークを使って銀河系の構造やブラックホールを研究している。天文学は純粋な好奇心に基づく基礎科学であり、私も含めて多くの研究者は自分自身の好奇心から研究を進めている。たとえ銀河系やブラックホールについて理解が深まったとしても、それが直ちに人類に経済的な利益をもたらすわけではなく、ほとんどの研究者はそのような短期的な利益とは無縁な研究をしている。では、基礎科学の本質的な価値とはいったい何なのか。私なりの考えを述べたい。