任天堂・最強の法務部「敗訴」報道→敗訴ではなかった…スーパーマリオ商標権

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「最強の法務部門」を持つといわれる任天堂が「スーパーマリオ」の商標権をめぐる争いで敗訴したというニュースが流れている。コスタリカの食料品店「スーパーマリオ」が任天堂との争いに勝利したとSNS上に投稿したことがきっかけだが、真相をたどっていくと、同社が「敗訴した」というわけではないようだ。任天堂はBusiness Journalの取材に対し「コスタリカの商標に関する事案は、訴訟ではなく行政の手続きの話であるため、法廷で判決が下りたものではありません。コスタリカ当局は食料品店において、対象のマークが当社商標と共存できると判断したということになります」と説明する。

 1985年に誕生し世界でもっとも有名なゲームタイトルともいわれる「スーパーマリオブラザーズ」。2023年には映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』も公開され、全世界興行収入が13億ドルを超えるヒットとなり、ゲーム原作の映画としては歴代興収1位に輝くなど、日本が世界に誇るIPだ。

 各種報道によれば、コスタリカにあるホセ・マリオ・アルファロ・ゴンザレスさんが経営する食料品店「スーパーマリオ」が、同国で登録している「スーパーマリオ」という商標権を更新しようとしたところ、任天堂の米国法人が異議を申し立て。コスタリカの当局はこの異議申し立てを退けたことで、食料品店は商標権を更新するに至ったという。

 任天堂といえば「最強法務部」といわれることが多い。ちなみに同社の法務部は外部との契約締結業務、およびそれに伴う各種調整をメインとしているとみられ、訴訟などの知的財産に関する紛争への対応は知的財産部があたっている。

 過去に同社が対応に動いたケースをみてみると、2018年、「白猫プロジェクト」が特許権を侵害しているとして開発・販売元のコロプラに44億円の損害賠償と製品の差し止めを求めて提訴。21年にコロプラが任天堂にライセンス料を含めて33億円の和解金を支払うことで合意した。昨年9月にはゲームタイトル「ポケモン」の特許権を侵害しているとして、「Palworld(パルワールド)」の開発元であるポケットペアに訴訟を提起したと発表し、大きなニュースとなったことは記憶に新しい。

「任天堂の知財部については、過去の事例から判断するに勝訴の可能性が低い訴訟を起こすケースは少ないとの心証を持つ方が多くいるようです。任天堂は、ゲーム業界大手として業界全体の知的財産保護の土台をつくってきた存在であり、どちらかといえば業界の発展のため自社が所有する特許についても、ある側面で開放的な姿勢を持つ企業だという印象があります」(永沼よう子/弁理士法人iRify国際特許事務所代表弁理士/24年11月23日付当サイト記事より)

有形無形の損失を被る懸念

 そして今回、任天堂が敗訴したと報じられているわけだが、実際には訴訟で争ったという事実や敗訴したという事実はなく、コスタリカの当局が食品スーパーの商標登録の更新を認めたという話であった。なぜ任天堂は海外の小さな食料品店の商標登録に目を光らせ、対応に乗り出すほど過敏な反応を示しているのか。ゲーム会社関係者はいう。

「正確な理由は分かりませんが、この食料品店はスーパーマリオの画像を宣伝活動の一環と受け取られる行為に利用していたということであり、一小売店が店舗内や営業エリアだけでやっている分には問題にはならないでしょうが、今の時代はSNSでそうした行為が広まると追随する動きが一気に広がる可能性もあるため、任天堂としては将来的に自社IPのブランド価値棄損につながる懸念があるとして毅然とした態度を示したのかもしれません。企業なり組織がスーパーマリオのキャラクターを広告や商品・サービスなどで使用すると、任天堂がその使用を許可していると見なされるため、不適切な使い方をされると任天堂としては有形無形の損失を被る懸念があるため、今回のような対応は極めて当然といえるでしょう」

(文=Business Journal編集部)

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