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今月3日に東ハトが発売したスナック菓子「パックル」。アルファベットの「C」のようにクルッと丸まった形状で、「まろやかチーズ味」はチーズをイメージさせるオレンジ色で「サクッと軽い食感」(同社公式サイトより)が特徴。パッケージの色は緑色で中身の菓子の写真がプリントされているが、菓子の形状や味、パッケージが明治「カール」に酷似しているとして話題を呼んでいる。「パックル」というネーミングが「パクる」という言葉を連想させることも人々の関心を高める要因になっているようだが、商標権や意匠権、特許権などの知的財産権の侵害に該当する懸念はないのか。専門家は「商標権・意匠権・特許権のいずれの観点からも、現時点では知的財産権の侵害が成立する可能性は低い」と指摘する。ただし、不正競争防止法に基づく『混同惹起行為』に該当するかどうかについては、将来的な販売展開によって判断が分かれる可能性があるという。明治はBusiness Journalの取材に対して「他社さまの商品につき、コメントは差し控えさせていただきます」という。
東ハトが発売したパックルは、同社独自のパフスナック技術により「サクッと軽い食感なのにしっかりとした歯ごたえと口どけのよさを実現」(同社公式サイトより)したもの。チェダーチーズパウダーとカマンベールチーズパウダーを使用した「まろやかチーズ味」と、20種の香辛料を使用してリンゴの甘みを加えた「パックル・コク旨カレー味」の2種類。どちらも昆布やかつおの出汁原料が加えられている。
そんな「パックル」が酷似しているとして比較対象にあげられているのがカールだ。カールは1968年に発売され約57年の歴史を持つ超ロングセラー商品であり、現在は「6種類のブレンド チーズあじ」「風味豊かな和風だし うすあじ」を販売。2017年には全国販売を終了して関西地域以西のみで販売すると発表して大きなニュースとなった。現在は西日本限定販売。ちなみにスナック菓子でありながらノンフライだ。
どちらもコーンを原料としているものだが、菓子の形状に加えて、パッケージのデザインも似ていると指摘されている。パックルの「まろやかチーズ味」とカールの「チーズあじ」を比較してみると、どちらも緑色で中央の商品名は全体より濃い緑色の丸みを帯びたデザインに囲まれており、右上にはパックルは「サクッ!!」、カールは「サク!」と印字されている。また、パックルは中央の商品名の下に赤文字で「まろやかチーズ味」、カールはほぼ同じ位置に黄色と赤文字で「チーズがコクうま!」とそれぞれ書かれている。このほか、パックルは右下に黄色で「Wチーズ仕立て」、カールは同じ位置に黄色で「チーズあじ」と書かれている。そしてパックルの「コク旨カレー味」とカールの「うすあじ」はともにパッケージの色が主に黄色という点が共通している。
不正競争防止法の観点
以上から、パックルがカールを意識した商品である様子がうかがえるが、弁理士法人シアラシア代表弁理士の嵐田亮氏はいう。
「東ハトは1991年に『パックル』を商標登録しており(登録番号第2347783号)、自社が保有する商標権に基づき『パックル』の商標を使用しています。また、『パックル』と『カール』は称呼・外観・観念のいずれの点においても非類似であり、東ハトが『パックル』を自社商品に使用することは、明治が保有する『カール』商標権(登録番号第840698号)を侵害するものではありません。カールのパッケージについて、明治が商標権を取得している可能性を考えましたが、調査した範囲では明治によるパッケージの商標登録は確認できませんでした。
次に、カールのお菓子の形状について意匠登録をしている可能性について検討しました。カールは発売から50年以上経過しており、もし発売時点で意匠権を取得していたとしても、意匠権の存続期間(登録日から最大25年)を超えているため、すでに権利は消滅しています。加えて、明治の登録意匠を確認しましたが、カールの形状に関する意匠登録は見当たりませんでした。
このほか、可能性は低いですが、仮に明治がカールの製法に関する特許権を有している場合、パックルの製法がその特許を侵害しているかどうかが問題となる可能性はあります。
最後に、不正競争防止法(第2条第1項第1号)の適用について検討します。他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているもの(周知表示)と同一または類似の表示を使用し、他人の商品・営業と混同を生じさせる行為は、混同惹起行為として不正競争防止法違反となります。パックルのパッケージがこれらの要件に該当する場合、不正競争行為と判断される可能性があります。現在、パックルの販売エリアは関東や新潟など一部エリアに限定されており、カールの販売地域は関西以西であるため、消費者が店頭でパックルをカールと誤認して購入する可能性は低いと考えられます。ただし、混同は実際に発生している必要はなく、『混同が生じるおそれ』があれば違法と判断される可能性があります。今後、パックルが全国展開した場合には、混同のおそれがあると判断される可能性も否定できません」
明治の見解
明治に見解を聞いた。
「以下2件の商標権を取得しています。
・『KARL\カール』登録0252350(明治)
・『カール(ロゴ)』登録0840698(明治)
(東ハト『パックル』について)他社さまの商品につき、コメントは差し控えさせていただきます」
(文=Business Journal編集部、協力=嵐田亮/弁理士法人シアラシア代表弁理士)