「ステージⅢやⅣ」などの進行期のがんと診断された場合、多くのがんでは診断早期を乗り切るとその後の診断時期からの5年生存率は上昇するー。こうした傾向が、国立がん研究センターの調査で明らかになった。ある程度予想された結果だが「サバイバー5年生存率」と呼ばれる初めての集計で確認された。同センターは「進行がんと診断されて治療を受ける患者にとって少しでも明るいメッセージになると期待している」としている。
胃がんでは生存率が大きく改善している(国立がん研究センター提供)
サバイバー5年生存率は診断日から経過期間ごとに、そこから5年間生存できる確率を示している。治療などを経て生存できた患者のその後の傾向が把握できる。全国のがん診療連携拠点病院など361施設で2012年にがんと診断された約39万人分の「院内がん登録」のデータを分析して「10年生存率」を算出した。平均年齢は67.7歳だった。
この調査の柱の一つとして、19種類のがんについて進行度を示すステージⅠ~Ⅳ期別にサバイバー5年生存率を集計した。その結果、例えば胃がんは、ステージⅠは診断0年(1年未満)~5年後の生存率は80%前後であまり変らなかった。一方、同Ⅳは診断から1年未満の5年生存率5.5%に対し、1年経過で12.3%、3年経過で41.8%、5年経過で61.2%と大きく改善した。
大腸や肝細胞、小細胞肺、食道、膵臓などほとんどのがんで同じ傾向が見られた。特に膵臓がんのⅣ期は診断0年の1.3%から5年経過の42.5%とその差は顕著だった。こうした傾向の背景には治療法の進歩があるとみられ、がんが進んだ段階で見つかっても適切な治療を受ければ予後に期待できることを示している。
一方、乳がんは、Ⅳ期の5年生存率は診断0年の36.3%から診断5年経過の44.5%で、どの病期もほぼ横ばいだった。乳がんは長期にわたり病状が悪化するリスクがあるのが原因とみられるという。
胃がんのステージⅠ~Ⅳ期のサバイバー5年生存率のグラフ(国立がん研究センター提供)
乳がんのステージⅣ期のサバイバー5年生存率のグラフ(国立がん研究センター提供)
国立がん研究センターによると、2012年にがんと診断された患者で、がん以外による死亡も含め算出した10年生存率(実測生存率)はがん全体で46.6%だった。各ステージを合わせた10年生存率は女性の乳がんが77.7%、男性の前立腺がんが66.6%と高い一方、代表的な難治がんである膵臓がんは5.6%、小細胞肺がん5.5%で依然厳しい数字だった。患者が多い大腸がんは48.7%、胃がんは47.6%だった。
生存率には統計の仕方で何種類かあり、実測生存率は死因に関係なく、「100人の患者が○年後に○人生存している」という考え方での統計。このほか「がんのみが死因となる状況」を仮定して実測生存率を調整する「純生存率」「相対生存率」「疾病特異的生存率」がある。
今回の報告で同センターは実測生存率と純生存率を公表。純生存率による10年生存率はがん全体で54.0%。前回調査(2011年診断)は53.5%でほぼ横ばいだった。ただ長期的に見ると生存率は確実に上昇している。
生存率はどのがんでも部位や進行度で大きく変わり、あくまで一つの指標だ。多くのがん専門医は「個々の患者の生存率は闘病の在り方と治療に全力を尽くす医師で決まる」と強調している。
主ながんのステージごとの実測生存率や純生存率などをまとめた表(国立がん研究センター提供)