台湾ホンハイ・日産・ホンダ・三菱自「4社連合」構想が浮上…薄いメリット

Business Journal 1 日 前
Facebook Icon Twitter Icon
台湾ホンハイ・日産・ホンダ・三菱自「4社連合」構想が浮上…薄いメリットの画像1ホンダ「ヴェゼル」(「Wikipedia」より/TTTNIS)

 日産自動車との経営統合に向けた協議が破談となったとホンダに、台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)が提携の申し入れをしていると21日、日本経済新聞が報じた。ホンハイは昨年12月に日産とホンダが経営統合の協議入りをすると発表する以前から、日産を買収する動きを見せていたが、なぜ今度はホンダへ接触を図っているのか。自動車業界を取材する全国紙記者は「日産・ホンダ・三菱自動車・ホンハイで『EV(電気自動車)4社連合』の結成を目指す考えだとみられるが、実現の可能性は低い。仮に実現しても米テスラや中国勢には遠く及ばない」と解説する。また、21日には英紙フィナンシャル・タイムズが、 菅義偉元首相やテスラ元社外取締役で年金積立金管理運用独立行政法人元理事の水野弘道氏らのグループが、テスラに日産への出資を要請することを計画していると報じたが、専門家は「テスラにとってメリットはほぼゼロなので、実現はしないだろう」と分析する。ここへきて日産とホンダをめぐってさまざまな観測が浮上している背景には何があるのか。

 日産とホンダは昨年(2024年)3月に自動車の知能化・電動化に向けた戦略的パートナーシップの検討開始に関する覚書を締結しており(8月に三菱自動車も参画を検討)、経営統合が見送りになった後もEVやSDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)に関する提携は継続する。その3社提携に割って入ろうとしているのがホンハイだ。世界最大手の電子機器受託生産会社であるホンハイは、米アップルのiPhoneの生産受託をはじめとするスマートフォン事業が柱だが、第2の柱としてEVに注力しており、20年にはEV開発プラットフォーム「MIH」のアライアンスを立ち上げている。

「ホンハイはタイの石油公社と合弁で立ち上げる予定だったEV工場の建設が中止になったり、生産受託を見込んでいた米国の新興EVメーカーが相次いで破たんしたりと、世界的な需要低迷も影響してEV事業は思うようにいっていません」(自動車業界に詳しいジャーナリストの桜井遼氏/24年12月22日付当サイト記事より)

「実現性はほぼない」

 そうしたなかでホンハイは、世界市場で販売不振に陥っている日産の買収を模索。日産の元副COOで現在はホンハイの最高戦略責任者(CSO)として同社のEV事業責任者を務める関潤氏は昨年、ルノーに接触し、ルノーが信託している日産株の買い取りを打診。日産がホンダとの経営統合に傾いた背景には、ホンハイによる買収を回避する意図もあったという見方もある。

「日産にはEV技術、ホンダにはHV(ハイブリッド)技術があるため補完し合えるという解説がされていますが、2040年に世界で販売するすべての自動車をEVとFCV(燃料電池車)にすると宣言しているホンダは、すでに日産と同レベルのEV技術を持っています。もちろんホンダとしてはSDVやAI関連をすべて自前でやっていくのは難しいですし、自社で開発した車載OSの供給先を増やしたいため、どこかと手を組む必要がありますが、ホンダが本当に欲しいのは日産が約30%の株式を持つ三菱自動車のPHV(プラグインハイブリッド車)技術だといわれています」(大手自動車メーカー管理職)

 では、ホンハイが目指すとされている日産ら3社との提携は実現性はあるのか。前出・桜井氏がいう。

「現時点ではホンハイが公式ルートでホンダと接触したという事実はないようですが、ホンハイはEV事業が苦戦しているため、どこか大手の自動車メーカーと手を組みたいのは確かでしょうから、日産がダメならホンダに、というかたちで提携を模索しているのかもしれません。ただ、技術的に先行するテスラや中国BYDならまだしも、ホンハイと提携する理由が日産とホンダにはないため、実現性はほぼないといっていいでしょう」

「テスラ側には日産に出資する理由もメリットもない」

 そして前述のとおり、日産がテスラに出資を要請する動きもあるという報道も出ている。

「これに関しては『日産以外の第三者が、テスラに日産への出資を要請する計画を検討している』という非常に抽象的な内容であり、なんともいえません。ただ、将来的に資金繰り悪化のリスクを抱える日産側にはテスラから出資を受けることに一定のメリットがあるかもしれませんが、EVの技術的に大きく先行するテスラ側には、日産に出資する理由もメリットもないので、実現性は低いでしょう」

日産の財務リスク上昇

 25年3月期の連結最終損益が800億円の赤字見通しとなっている日産の財務リスクは上昇している。今月21日、ムーディーズ・ジャパンは日産の発行体格付けを投機的等級(投資不適格に該当)の「Ba1」(ダブルBプラスに相当)に引き下げ。日産の自動車事業は昨年12月末時点で約1兆2000億円の手元資金を持っているため、すぐに資金繰りに窮する可能性は低いとみられているが、25~26年3月期には約1兆円の社債の償還を迎え、社債発行時に大きな上乗せ金利が必要となるなどして資金調達コストが上昇する懸念がある。23年3月には米格付け会社S&Pグローバル・レーティングが日産の長期発行体格付けを「トリプルBマイナス」から投機的水準となる「ダブルBプラス」に引き下げていた。

(文=Business Journal編集部、協力=桜井遼/ジャーナリスト)

もっと詳しく