
かつては子どもたちの憧れの職業とされた教員。しかし今、その現場は深刻な人手不足に直面しています。その背景には、通常の業務に加え、保護者対応の増加など教員の負担が大きくなっている実態があります。
この負担の一端を担ってしまっているのが部活動。2023年度からスタートした「部活動改革」は、休日の部活動を地域に移行するなど、教員の負担を軽減するための取り組みです。
しかし、教員を悩ませる部活動の負担は、残業や休日返上での部活動対応だけではありません。
今回は、元文部科学大臣であり教育現場の課題に向き合ってきた盛山正仁氏、部活動の集金管理を透明化する管理システム「スクウる。」を開発した株式会社PAY ROUTE取締役副社長の清水友大氏に、部活動をめぐる教員の実情や改革の方向性、そして「スクウる。」が果たし得る役割について語っていただきました。
教員が抱える負担は長い拘束時間にとどまらない

——2023年度、部活動改革がスタートしていますが、この改革が進められるに至った教員にかかる負担にはどのようなものがあるのでしょうか?
盛山:部活動に伴う教員の負担は多岐にわたります。
まず大きな負担は、拘束時間の長さです。
生徒の指導や採点にとどまらず、レポートの作成や保護者の対応などで、そもそも教員の拘束時間は長時間に及ぶことがあります。それに加えて、放課後や土日の部活動が、拘束時間を長くしてしまう大きな要因になっているのです。
これまで部活動は、「生徒を指導したい」と考える教員の方々の善意に支えられて成立していたといっても過言ではありません。
こうした教員の長時間労働は、昨今の教員不足の原因にもなっています。人気のない職業になりつつある、ということですね。
また、心理的な負担も大きいです。
部活動中の事故が起こらないよう、安全確保にも細心の注意を払わねばなりませんし、必ずしも自分が経験のある分野の部活動の顧問になれるとは限りません。これは、部活動の種類が多く、教員の人数に限りがあるためです。
清水:これまで、「スクウる。」のニーズ調査などのために、何度か高校に伺っているのですが、盛山先生がおっしゃっている状況はよく耳にします。
やったことがない分野の部活動を担当することになった場合、一からルールや様式を覚えることになります。しかし、これを「拘束時間」としていないケースもあるようです。
生徒のためとはいえ、教員が学校というものに使う時間が非常に長いということを実感しますね。
——実際に部活動で生徒たちに指導する、時間を使うこと以外に、部活動における教員の負担はあるのでしょうか?
盛山:保護者とのやりとりが負担になる場合もあるでしょうね。また、部活動に関わる金銭の管理を顧問がしている場合は、それも大きな負担になり得ます。
高校生などの場合は生徒が会計係などを行うケースも多いと思いますが、小中学生の場合は、遠征にかかる費用などについて顧問が会計管理をしているということも多いのではと感じています。
部活動改革の推進で課題となる部分とは

——盛山先生が文部科学大臣時代にも、そのような部活動に関わる課題は多く見られたのでしょうか?
盛山:そうですね。実際に国会などでも、部活動に関わる教員の状況を改善すべきだという質問や意見をいただいたこともあります。
そのような声が多く上がっていたため、文部科学省では2024年8月にアサヒグループホールディングス代表取締役会長の小路明善さんを代表者に迎え、「地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議」を発足しました。これは、部活動の地域移行に関する課題の整理や支援策の検討などを行う会議です。
部活動改革には「休日の部活動の段階的な地域移行」などの方策が掲げられています。しかし、この方策ひとつとっても、課題が多々存在します。
部活動を地域にアウトソーシングするにしても、誰が指導できるのか、場所の確保はどうするのか、などです。公立学校の場合は、アウトソーシングにかかる費用をどこから捻出するのかという部分も今後議論になっていくでしょう。
清水:兵庫県の神戸市では、中学校の部活動を廃止して地域の方々と活動する「地域クラブ活動」に移行するという話を耳にしました。
盛山:たしかに、神戸市では2026年に中学校の部活動終了という方向で話が動いていますね。しかし、まだ費用の問題など懸念されている部分は残されています。
「スクウる。」は部活動のルールづくりに寄与できるか

——このように、多くの場で議論にあがるほど、部活動における教員の負担が課題視されていますが、PAY ROUTEが決済に関して部活動という部分に着目したのも、こういった課題に触れる機会があったためなのでしょうか?
清水:もちろん、我々がROUTE PAYという独自の決済システムを持っていたことから、新たな分野に課題やチャンスがないかと考えた結果ではあるのですが、最初は部活動ではなく、入学金や受験料の決済に活用できないかと考えていました。
困りごとをリサーチするうち、実は、学校は入学金や受験料の振り込みに関してはあまり課題を持っておらず、部活動の集金に頭を悩ませているということがわかったのです。
部活動の活動費は、その集金方法が顧問によって違い、学校側が把握できていないのが現状だそうです。しかし、部活動の集金で不正があった場合、学校の責任になりますし、何らかの対処をしないわけにはいきません。
会計管理において、学校が部活動に抱える課題に触れたことが、「スクウる。」の開発に至ったきっかけです。
盛山:教員による立て替えも少なくないと耳にします。遠征や大会の際の生徒の昼食代や飲み物代などを立て替えている、というケースですね。その後の請求先が学校なのか、家庭なのかなどが曖昧なまま立て替えてしまい、請求を出しづらくなるという心理的なストレスもあるのではないかと思います。
部活動の集金に関するルールが、しっかりと定められていないことによって起こっている課題ですね。どう集金するのがよいのか、立て替えはしてもよいのかという部分に関して迷いが生じないよう、ルールづくりが必要な領域だと感じます。
清水:そうですね。「スクウる。」を導入していただくことで、そういったルールづくりにも寄与していけるのではないかと思っています。
システムを導入することで、学校側が仕様に沿ってルールを決定、周知することで、顧問の方々の負担も軽減されるのではないでしょうか。
一方で、「スクウる。」は柔軟なカスタマイズも可能なので、決済に関しても部費として捻出するのか、後援会からの寄付金で賄うのか、などもシステムに入れ込めます。部活動改革によって教員ではない方が顧問に入る場合でも、システム上でルール決めを行うことができると考えています。
民間ソリューションが行政で活用されるためのステップとは

——「スクウる。」をはじめとする、PAY ROUTEの認証技術「ROUTE CODE」を利用した決済システムは、IDパスワードを必要としない、という部分が大きな特徴だと感じます。こういった決済システムが行政の場において活用される可能性はあるのでしょうか?
盛山:行政は業務システムの仕組みを3つに分ける「三層分離」という仕組みを利用しています。マイナンバーなどの情報管理に関わる部分や、地方自治体同士の情報共有や職員向けサービスなどに関わる部分に関してはかなり厳格にセキュリティ管理がなされています。
その2つ以外の、インターネットを利用して行う業務に関わる部分に関しては、民間の決済システムが活用される余地があるのではないかと思います。
ただ、行政にはなかなか開示できない情報があることもたしかです。そこにどう入り込めるかは、行政側が活用や導入のメリットを感じるかどうかが重要です。
たとえば、市民の利便性というメリットに着目した結果、以前は不可能だった税金のコンビニ決済なども現在は可能になっていますよね。
清水:たしかに、我々のROUTE CODEを利用した認証技術は、強固なセキュリティが強みではあるものの、それを行政側がどこまでメリットと捉えてくれるか、という部分は課題ですね。
やはり活用や導入にメリットを感じてもらうポイントは、ユーザー数だと感じます。
今後、中学校や高校の部活動への「スクウる。」の導入が進みユーザー数が増えることで、ユーザー数の壁を超えていくとともに、多くのユーザーが利用しても不正利用などが起こらないことを実際に示していければと思っています。
この取り組みが、行政の方々からも、ROUTE CODEの活用や導入にメリットを感じていただけることにつながるのではないでしょうか。
盛山:PAY ROUTEさんのような民間企業のほうから、自身のシステムを使った仕組みを行政が行っていることに合わせて提案する、という動きもよいのではないでしょうか。
そうすることで、行政側から「もっとこうしないと使えない」「こう変えてほしい」という話が引き出せるのではないかと思います。
清水:その提案のためにも、実績づくりは大切ですね。
現状「スクウる。」の仕組みは、私立高校や愛知県の東海市芸術劇場で導入、活用されています。こうしたところで、不正利用がなく、顧問の方々の負担がどれだけ減ったかなどを可視化し、公立中学校や高校など数が多い部分に拡大していければよいですね。
この動きは、「スクウる。」に限らず、ROUTE CODEを活用した決済システムの導入や活用を拡大する上でも重要な動きだと考えています。
盛山:部活動をはじめ、まだまだ多くの部分に課題は残っています。部活動改革なども、主たる問題を解決するために、さまざまな障壁が存在しているのですよね。
清水:今後、そういった部分にテクノロジーなどの力を介することで解決したり、スピード感を持たせたりすることは可能かもしれませんね。
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部活動改革や教員の負担軽減は、一足飛びに解決できる課題ではありません。
しかし、「スクウる。」のような仕組みが現場の小さな困りごとを解消していくことで、教員が本来の教育活動に専念できる環境に近づいていくはずです。
行政と民間がケースに応じて手を取り合い、学校現場に寄り添った改革を進めていくことで、持続可能な教育環境が実現していくはずです。
※本稿はPR記事です。