考えなくても回るオフィス…“成長するAI”が描くバックオフィス自動運転化

ビジネスジャーナル 8 時 前
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考えなくても回るオフィス…成長するAIが描くバックオフィス自動運転化の画像1UnsplashのTowfiqu barbhuiyaが撮影した写真

●この記事のポイント
・バックオフィスの“自動運転化”を掲げる新サービスが登場。AIが自社固有のルールや例外処理を学習し、業務を丸投げで自動化する。
・導入企業では数千時間規模の業務削減や数千万円単位のコスト削減を実現。ROIは平均3~6カ月で回収可能と高い効果を発揮している。
・「考えることからの解放」を掲げ、現場負担を減らす設計が特徴。経営者にとってはAI導入の本質と業務設計の重要性を学べる事例だ。

 AIの進化が加速し、生成AIや自動化ツールはビジネスの現場に急速に浸透している。しかし、多くの企業が依然として“人手”に頼り続けている領域がある。それが、バックオフィスにおける書類処理やデータ入力だ。

「自動車が自律走行する時代に突入した一方で、企業の働き方は依然として“手動運転”に留まっています」 

 こう語るのは、株式会社YOZBOSHI(ヨツボシ)の代表取締役社長CEO、藤井翔吾氏だ。同社が開発・提供するクラウドサービス「Connected Base」は、単なるAI-OCRやRPAでは届かなかった“人の判断を伴う業務”を代替し、バックオフィスを“一任型の自動化”する。

●目次

  • バックオフィスの「自動運転」構想
  • なぜ“丸投げ”が可能なのか──AI導入の本質
  • 今後の展望──“自動運転”の次へ

バックオフィスの「自動運転」構想

 藤井氏は、現場の状況をこう指摘する。

「請求書や契約書の転記、ハンコ待ち、Excelへの入力……。こうした作業はいまだに人の判断と手作業に依存しています。AIやRPAを導入しても、例外処理や現場独自のルールが残り、結局人が対応しているケースが多いのです」

 そこでYOZBOSHIが打ち出したのが「Connected Base」。同サービスの特長は以下の3点に集約される。

(1)“成長するAI”:自社固有のルールや例外処理を学習し、運用するほど精度が向上
(2)“丸投げ”設計:ユーザーは書類をフォルダやクラウドに保存するだけで処理が完了
(3)“全方位対応”:定型・非定型、複雑なフォーマットや外国語文書まで一気通貫で対応

 従来の自動化ツールが「定型業務の一部自動化」にとどまったのに対し、Connected Baseは“現場判断ごと”自動化する点で異なる。

考えなくても回るオフィス…成長するAIが描くバックオフィス自動運転化の画像2

 導入事例を見ると、その効果は顕著だ。「2024年社内導入調査(YOZBOSHI調べ)」。

・大手建設ゼネコン:年間7,350時間=46人月、約1,300万円のコスト削減
・大手医療機器ディーラー:月1,600時間削減、年間2,600万円のコスト効果
・中堅製造業(ユミックス社):経理処理の324時間/月削減=年間約505万円の削減

 いずれの事例でも、単なる効率化にとどまらず、ROIは平均3~6カ月で回収可能というスピード感を実現している。

「現場に“難しい操作”を強いると定着しません。だから私たちは『書類を保存するだけ』で済む仕組みに徹底的にこだわりました。現場負担が軽減されることで、自動化は全社に広がっていくのです」(藤井氏)

なぜ“丸投げ”が可能なのか──AI導入の本質

 Connected Baseは、AI-OCRや生成AIに加え、YOZBOSHI独自の「解析カスタム」を組み合わせている。YOZBOSHIは、従来のAI-OCRが苦手とする“文脈補正”や“業務要件への再構成”を独自アルゴリズムで実現しているといえる。

(1)特定する:ユーザー固有のフォーマットを見分ける
(2)補正する:OCRの誤読を意味ごと修正し、正しい文脈でデータ化
(3)纏める:文章や数値を業務要件に沿ったまとまりへ整理

 さらに、必要に応じて人のオペレーターが最終チェックを行う。これにより「完全非定型の書類」や「外国語の契約書」にも対応できる。

「AIは万能ではありません。だからこそ、AIと人間の役割分担を設計し、“人を減らす”のではなく“人を活かす”方向に進める必要があります」(藤井氏)

 藤井氏の言葉からは、経営者がAIを導入する際に見落としがちなポイントが見えてくる。

・経営者が押さえるべき3つの視点」

(1)「業務設計」が最初の壁
単にAIを導入しても成果は出ない。現場に存在する「例外ルール」や「属人判断」をどう可視化し、共通化するかが成否を分ける。
(2)「教育投資」を惜しまない
Connected Baseでも、導入時にAIをカスタムする工程がある。これは人材教育と同じで、「初期の投資が、その後の安定稼働を決める」という考え方だ。
(3)「丸投げ設計」で現場を解放する
DXが失敗する最大の理由は「現場に負担を強いること」。逆に現場が自然に使える設計なら、全社的なスケールは容易になる。

今後の展望──“自動運転”の次へ

 YOZBOSHIは今後、Connected Baseをバックオフィス業務にとどまらず、**業務全般の「自動運転基盤」**へと拡張していく構想を持つ。

・法令対応:電子帳簿保存法やインボイス制度などへの完全対応
・クラウド連携:freeeなど外部サービスとの自動連携
・グローバル対応:海外書類や多言語処理の拡張

「バックオフィスは企業活動の“血流”です。ここが滞ると、どんな戦略も実行できません。私たちは、この領域を“自動運転化”することで、企業が本来注力すべき価値創造に集中できる社会をつくりたいと考えています」(藤井氏)

「Connected Base」の本質は、単なる業務効率化ツールではなく、「人間の思考負担を減らす」という発想にある。

「人が考えるべきなのは、もっと創造的で付加価値の高いこと。ルールに従うだけの作業からは解放されるべきです。私たちは、そのための“自動運転”を提供しています」(藤井氏)

 AIが進化する時代において、経営者に求められるのは「人とAIの役割分担をどう設計するか」だ。YOZBOSHIの挑戦は、バックオフィスの未来を映す鏡であり、ビジネスパーソンにとっても多くの学びを与えてくれるだろう。

(文=UNICORN JOURNAL編集部)

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