Canva、なぜ取扱説明書をドラマに?日本市場に合わせた“学びとエンタメ融合”戦略

ビジネスジャーナル 1 月 前
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●この記事のポイント
・Canva Japanが日本のデザイン市場向けに、従来のチュートリアル動画をドラマ化した「拝啓 今日も私と商店街は元気です」を制作。学びとエンタメを融合させ、ユーザーが楽しくデザインを学べる新体験を提供。
・この取り組みは、日本市場を重視する「シン・地元主義」戦略の一環。生成AI機能や日本独自のUX強化、地域に根ざしたコンテンツ提供を通じて、デザイン経験が浅いユーザーも取り込む狙いがある。
・ビジュアルコミュニケーションの重要性が高まる中、物語や映像で学びを届けるCanvaの試みは、単なる機能解説を超えた「ユーザー体験の再発明」を志向し、日本でのさらなる成長を目指す。

「チュートリアル動画がドラマに?」――従来の無機質な解説動画を物語化することで、学びとエンタメを融合させた新たな試みが、日本のデザイン市場で注目を集めている。キャンバジャパン株式会社は、日本独自の戦略『シン・地元主義』の一環として、ドラマ『拝啓 今日も私と商店街は元気です』を制作。チュートリアル動画をドラマ形式にすることで、ユーザーに学びながら楽しんでもらう体験を提供する。

●目次

  • 企画発表の背景
  • ドラマ『拝啓 今日も私と商店街は元気です』概要
  • Canvaの国内戦略と事業展開
  • ビジュアルコミュニケーションの潮流

企画発表の背景

 Canvaはグローバルで急成長するオンラインデザインプラットフォームだが、日本市場は世界でもっとも成長著しい地域のひとつだ。キャンバジャパン株式会社カントリーマネージャー高橋敦志氏は記者会見で、「日本のユーザーに寄り添うことが、グローバル戦略の成功にも直結する」と語り、今回の取り組みの背景を説明した。

 高橋氏は続けて、最新の生成AI機能やチュートリアル動画を紹介。「たとえばSNS用バナーを作るときにテキストを入力するだけで、AIが複数のデザイン案を提示します。さらに、ドラマ形式のチュートリアル動画で操作方法やデザインのコツを物語として学べるようにしました」と説明。デザイン経験が浅いユーザーでも、楽しみながら学べる環境づくりが狙いだ。

 会場では、短編ドラマの冒頭シーンが公開され、記者や参加者が実際に視聴。「チュートリアル動画とは思えないほど自然で引き込まれる」との声が上がり、単なる操作解説にとどまらない“ユーザー体験の再発明”が示された。

ドラマ『拝啓 今日も私と商店街は元気です』概要

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 タイトルは『拝啓 今日も私と商店街は元気です』。舞台は地方の商店街で、若手店主や地域住民が日常の課題に取り組む姿を描く。チュートリアル動画の内容は、登場人物が実際にCanvaを使ってチラシやポスターを作成する場面に組み込まれ、学びと物語を自然に融合させている。

出演者・監督の声

有働佳史監督
チュートリアルとドラマを両立させる難しさに言及。「物語のテンポを損なわず、学びの要素をどう組み込むかが最大の課題でした」と説明。

石川翔鈴さん
「視聴者が知らず知らずのうちにデザインのコツを吸収できるよう意識しました」と語る。自然な演技を通じ、学びの要素を違和感なく物語に組み込む工夫を紹介。

三倉茉奈さん
母親役を通じ、世代を超えた学びの価値を表現。「子どもも大人も一緒に学べる環境を描けたのが魅力です」とコメント。

浜野謙太さん
本人役で商店街と絡み、実体験に基づく自然なデザイン活用を演出。「商店街の人々との親和性も意識しました」と語った。

Canvaの国内戦略と事業展開

 高橋氏は会見で、日本市場向けの「ローカライズ戦略」の具体例を紹介。Canvaは単なるグローバルプラットフォームの提供にとどまらず、日本独自のUXや機能を強化している。

日本仕様のUX
ふりがな機能や印刷・配送対応など、国内ユーザーの利便性を重視。

コンテンツパートナーとの連携
Aflo、いらすとや、円谷プロなどの素材提供企業と提携。教育や商店街など地域コミュニティ向けの素材も増やしている。

教育分野への浸透
学校や塾など教育現場での導入を進め、子どもから大人まで幅広いユーザー層に対応。今回のドラマ形式チュートリアルも、教育現場での利用を意識して設計されている。

ビジュアルコミュニケーションの潮流

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 Canvaの戦略は単なるキャンペーンではなく、社会的潮流とも連動している。最新の調査によると、91%の人が「文字よりもビジュアルの方が理解しやすい」と回答しており、ビジュアルコミュニケーションの重要性が高まっている。

 高橋氏は「文字だけで伝える時代は終わりつつある。物語や映像を通じて学びを届けることが、ユーザー体験の向上につながる」と指摘。チュートリアル動画のドラマ化は、この潮流を踏まえた試みだ。

 今回のドラマ形式チュートリアルは、Canva Japanが日本市場での成長を加速させる象徴的な取り組みだ。従来の無機質な解説動画を物語化することで、学びを楽しみに変え、幅広いユーザー層を取り込む狙いがある。

 高橋氏は最後に「日本のユーザーから学び、日本市場に最適化したプロダクトとコンテンツを提供する。今後も教育や地域コミュニティに寄り添った取り組みを拡大していく」と語り、ビジネスとしての意義と社会的価値を強調した。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

※ドラマは2025年10月1日よりCanvaJapan公式YouTudeチャンネルにて第1話〜第3話を公開(第4話〜第6話は順次公開)

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